コミック会話
自閉症スペクトラム症に使用される支援ツールはたくさんあります。
コミック会話(CSC)という支援ツール(技法)を紹介します。
CSCとは人の線画に吹き出しを組み込み、会話の中での状況理解を促す技法です。これはキャロルグレイにより1998年に紹介されました。主に自閉症児、高機能自閉症児、アスペルガー障害児を対象に抽象的で理解が困難な社会状況に対する理解の促進やソーシャルスキルの向上を目的として用いられます。
日本ではあまりコミック会話が知られていないようです。
実際に臨床場面で使用していて、子どもとも話し合いやすく、保護者さんの中には家庭でも取り組むことができたという方もいらっしゃり、使用しやすい技法です。
以下に活用方法と個人的に考えた効果をまとめています。
1)CSCの具体的な活用
実際的な方法としては、セラピストが対象児と困った場面、問題場面を振り返り、1枚の紙に棒人間の絵で会話を書いていきます。気持ちは雲形の吹き出しにします。振り返ることで対象児の認知の仕方、対処行動を理解します。
そして、相手の気持ちや自分の気持ちの理解促進を促します。その中で他者に対して異なった認知がありそうであれば、一緒に考え、セラピストから認知を提供することも必要です。また、適切な対処行動を考えていくことも重要です。
以下の写真のように簡単な線がで話し合えることが手軽ですし、実際に使用していて、文字のわからない幼児さんにも、文字を書かずに表情や色を用いて活用できます。
怒った表情やうれしい表情を書き込んだり、悲しい気持ちは青色のペン、怒りは赤色などを使用します。
2)CSCの効果
①外在化
視覚化することは、一度、状況や自分の気持ちを外に出すことになります。不快な気持ちを外に出し客観的に見ることで、それから距離を置いて擬人化できるようになります。「自分はこの時、悲しかった」などと感情を擬人化し言葉にできます。外在化することで言語化できるようになり、話し合うことができるようになります。
②ユーモア
外在化することに加えて、コミック=漫画ということで、ユーモアとして捉える面もでてきます。コミックは楽しみであり、子どもをはじめ大抵の日本人には親近感が湧くはずです。イライラをユーモアで見ていくことは、少し余裕を持ちながら見ていくきっかけになります。また、ユーモアや笑いはストレスを緩和し、健康をもたらします。臨床場面では笑いを扱うことも効果的とも言われます。ユーモアを持たせる効果もCSCにはあるかもしれません。
③表現の多様化
CSCはコミックということで楽しみながら、多様な表現を獲得できます。好きな漫画の主人公の認知や表現方法を持ち出してもいいかもしれません。漫画だけでなく、理想の人の考えを持ち出す、更にその理想の人の人物画を子どもなりに描いてみて表現してもいいかもしれません。様々な表現の広がることを認めながら話し合いを継続するきっかけになります。
以上がCSCの大まかな概要です。ただ、最も大事なのは、対象児の自発性と自己肯定感を大事にしながらセラピーを進める必要があるということです。よくあることが、どうしても教育的になり子どもと対立してしまうことです。子どもと話し合う、協調して問題場面を話し合うことがポイントになります。
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