ASDの心理教育


心理教育という言葉はあまり耳にする方は少ないかもしれません。精神科にしていた時、今よりよく使っていましたし、よく耳にしました。心理教育とは障害を持つ本人やその家族に症状についての情報を伝え、症状にどのように対処できるかを考えるきっかけとなる場です。自分自身の特徴やパターンを知ることが心理教育といえます。

発達障害(ASD)児者や家族の方にも心理教育は必要です。単に診断名を伝えるだけでは不安に陥ったり、具体的にどうすればよいのか分からなくなってしまいます。ASDは症状の特徴を理解することで具体的に困難に対応できる可能性が広がるはずです。また、2次障害を抑えたり、軽減するとも考えられます。

1)本人へ伝えること

 ASDの特徴を伝えるというだけでなく、本人から時間をかけて聞き取り、特徴を理解し、得意不得意を明確にすることが必要です。また、「こだわり」という特徴などは「得意なことに没頭する力」と肯定的な側面でもあることを伝えて、ASDと思われる特徴を肯定的に見ていく事で自尊心も損なわ

になります。他者と話し合うことで、自分から切り離して考えることができ、行動をどのようにコントロールするかを落ち着いて考えることができます。

 心理教育で大切なことは障害(症状)受容を考慮することです。「自分(自分の人生)が否定された」と考えてしまう人、「症状が問題で自分は悪くない」と考える人がいます。後者のタイプであれば障害の特徴など話しやすいですが、前者であると受け入れは難しくなります。前者の場合は本人の困難さがどの程度であるか、どのタイミングで障害としての行動であることを伝えるか、否定的に捉えない伝え方などを考慮する必要があります。ASDの場合は特徴と捉えるように伝えることが多いようです。ASDの心理教育では「スペクトラム」という概念を用いて説明すると、比較的理解は促しやすいかもしれません。心理教育で症状・行動理解が十分にできると、対処行動の話し合いや治療はすすみやすくなるようです。

2)家族へ伝えること

ASD児・者と生活してきた家族は、困難がどうして生まれているのか分からないまま奮闘していることが多いです。育て方が悪かったのかなどと自責的になっていたり、感情の起伏が激しくなり家庭内が混乱していることもあります。

ASDの症状を伝えることにより、これまでの育児や環境だけが問題ではないこと、子どものわがままや怠けではない、というように、問題を外在化することができます。そして、大事などは捉え方によってはプラス要素であることを伝えることです。障害や症状はマイナス面ではなくプラスの面もあることを理解してもらうことで、家族の症状の見方が変わってきます。家族と対処法を話し合うときは、その家族がもつ文化的背景を知ることが第一です。十分に家族の話を聞き、家族関係や生活パターン、価値観を知ることでどこかに隠されている力をみつけることが、エンパワーに繋がります。



ASDの一般的な心理教育の概要です。個々のケースにより対応は違いますが、丁寧に家族と本人から聴き取り、タイミングよくASDの特徴を伝え、話し合いを始めることで、対処方法が具体化できるようです。

なるさ 療育学習室

子育て相談、療育に関する相談室です。応用行動分析(ABA)という科学的視点から臨床心理士がお子さんの学習と成長を促します。

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