「スマホ、ゲーム、タブレットをはじめとしたメディア視聴は子どもに影響があるの?」「ゲームはさせない方がいいですか?」「うちの子ゲーム依存ですかね?」という質問を受けることがよくあります。
ゲームやネットをはじめとしたメディアの影響は多岐にわたります。良い影響、悪い影響がたくさん考えられています。保護者の方が心配される悪影響について、大まかに2つの視点があります。
Displacement Theory
ゲームやネットの使用が発達や健康の必要な時間を奪う。つまり、使用する時間が多くなればなるほど、必要な言葉の発達するかかわり、対人スキル、運動を育む時間が奪われるという考えです。
Content Theory
視聴内容が子どもの心や行動に影響を与えるということです。攻撃的な内容であると攻撃的な行動が増加するかもしれないということです。
この2つの視点をすこし頭の片隅にいれておくだけでも、メディアは子供の時間を奪っているのか、内容が影響を与えているのかを考えて、メディアの使用を考えることにつながります。
次にメディアの使用について記載しています。必ずしも以下の事項が顕著に現れるということではありませんが、みていただくと分かるように影響は多岐にわたり、場合によっては心身、対人関係、家族関係に深刻な影響をもたらします。
メディア使用の影響
(1)暴力・攻撃性:メディアの暴力シーンへの曝露,暴力的なゲーム使用は攻撃的行動を増大させ,暴力に対する罪悪感を麻痺させる(脱感作)
(2)運動不足・肥満:長時間の視聴は運動不足を助長し,肥満・体力低下を招く
(3)性の問題:メディアでの早期からの過激な性表現への接触が,性行動の低年齢化や問題を引き起こす(4)喫煙,酒,違法薬物:メディアで繰り返し見ることがその使用を促す
(5)学業成績:長時間視聴は学業成績の低下と関連する
(6)行動・心理:視聴時間は注意欠陥問題や自尊心の低下と関連する
(7)睡眠:長時間視聴は睡眠時間を減少・不規則にし,睡眠の質にも影響する。光はメラトニン分泌抑制に作用し体内時計の乱れを引き起こす(ブルーライトはその作用が強い)
(8)成人期の健康への影響:小児期の視聴時間が成人期の運動不足・肥満・喫煙・高コレステロール血症・高血圧と関連する
(9)依存・ネットいじめ:ゲームなど報酬系の依存(嗜癖)に加えて,SNS(socialnetworkingservice)へのつながり依存,ネット上でのいじめは世界中で問題となっている
(10)脳への影響:神経細胞は筋肉細胞と似て使わないと機能が低下する。考える時間を奪われることによって思考力をていかさえる懸念がある
佐藤和夫(2018)IT の功罪:電子メディアの子どもへの影響とその対応、小児保健研究
メディアが子どもの発達を遅らせる、問題行動を増加させるということは言えないものです。そのためメディアが全て悪いということは言えません。しかし、現在の生活はメディアにはまりやすく、多くの子どもが依存にもなりやすい環境にいます。
日本では「子どもに及ぼすメディアの影響」に関する提言が日本小児科学会(2004)より掲げられています。2004年のものですが、ひとつの指標になります。
1.2歳以下の子どもには,テレビ・ビデオを長時間見せないようにしましょう。内容や見方によらず,長時間視聴児は言語発達が遅れる危険性が高まります。
2.テレビはつけっぱなしにせず,見たら消しましょう。
3.乳幼児にテレビ・ビデオを一人で見せないようにしましょう。見せるときは親も一緒に歌ったり,子どもの問いかけに応えることが大切です。4.授乳中や食事中はテレビをつけないようにしましょう。
5.乳幼児にもテレビの適切な使い方を身につけさせましょう。見おわったら消すこと.ビデオは続けて反復視聴しないこと。
6.子ども部屋にはテレビ・ビデオを置かないようにしましょう。
アメリカ小児学会(2016)もメディア使用について提言をだしています。アメリカ小児学会の指標は時間なども明確に示されて具体的です。
1.乳幼児は電子メディアではなく人と関わる遊びを通して学んでいく
2.T 機器はすぐに使えるようになるので,早くから使わせようと思わなくてよい
3.1歳半までは,電子メディア使用を避ける(遠い家族とのビデオチャットのみ可)4.1歳半から2歳では,電子メディアを使用するのであれば
5.質の高い内容を選び必ず保護者が子どもといっしょに使用する
6.2歳から5歳については,質の高い内容を選び1日1時間までとし,子どもの理解を助けるように保護者もいっしょに使用する
7.子どもをおとなしくさせるためだけには使用しない
8.大人は,子どもと遊ぶ時,食事中,寝室では電子メディアを使わない
メディアの悪影響と日本とアメリカの小児学会の提言を紹介しました。ここからみると、乳幼児期にメディアについての使用方法を大人がしっかりと認識しておくことが必要といえます。実際、子どもが生まれる前から知っておくことが一番いいのではと考えています。
メディアのよいところもたくさんあります。メディアのよいところは、1)情報にアクセスし、様々な知見を広めることが出来ること、2)余暇となり気晴らしにもなること、3)コミュニケーションツールにもなること、などがあげられます。
しかし、悪影響も多岐にわたります。現在の社会ではメディア禁止ということではなく、上手に付き合うことを考えないといけないですね。
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